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国境や文化の壁を超えて人々に支持される世界共通の文化であるスポーツ。アスリートたちが限界に挑み、勝利を目指して全力を尽くす姿は、多くの人々に感動を与え共感を呼び起こします。特にオリンピックやワールドカップといった大規模なスポーツイベントは、世界中の人々の注目を集めます。
しかし、日本をはじめ世界中のスポーツイベントが今、危機に瀕しています。その理由は気候変動の深刻化です。このまま気候変動が進むと、スポーツイベントの開催が減少していくだけではなく、スポーツそのものの存続までもが危ぶまれ、未来の子どもたちがスポーツを楽しめない世界になってしまうかもしれません。
近年、気候変動の深刻化に伴い、多くのスポーツイベントが甚大な被害を受ける事例が増加しています。以前は同じ時期に開催できていたスポーツイベントが気温上昇をはじめ、豪雨や豪雪、雪不足や水不足などによって、試合が中止・延期されるだけでなく、アスリートや観客の安全を脅かすようにもなってきています。日本のスポーツイベントでは、夏の高温や台風による試合の延期などが増えつつあります。海外ではさらに深刻な状況が報告されていて、今後もその影響は拡大することが予想されます。ここからは海外や日本のスポーツイベントにおいて気候変動の影響を受]けた事例を具体的にご紹介します。
テニスのグランドスラム大会(4大大会)の1つであり、140年以上の歴史を誇る「全米オープン」。2018年8月にニューヨークで開催された全米オープンでは、気温が32度を超え、さらに湿度も上昇したため、準々決勝中にテニスファンが観客席で倒れ、数人の選手が試合中に医療処置を要請するという事態に。出場選手の1人は「今日誰かが死ぬかもしれない」と厳しい警告を発しました。
US Open fan collapses in stands as top player warns ‘someone will die’ due to hot conditions | INDEPENDENT(外部リンク)Daniil Medvedev warns a US Open player will ‘die’ in angry outburst as temperatures hit 33C | INDEPENDENT(外部リンク)
気候変動の影響で日本をはじめ、世界各地で平均気温が上昇しています。その影響を大きく受けているのがマラソンです。2019年にカタールの首都ドーハで開催された世界陸上競技選手権大会はアラビア半島の暑い気候特性に加え、カタールの8月の平均地表気温が年々上昇※しているという背景から、従来の開催月である8月から10月に開催が延期されました。さらにマラソン競技は暑さ・湿度への配慮から世界選手権で初の深夜開催に。しかし、こうした配慮にも関わらずレースのスタート時の公式推定気温は30~32.7℃、湿度73%を記録。結果、世界中から選りすぐられたマラソン選手68人のうち28人が完走できなかったという予想外の展開を迎えました。また、記憶に新しい2021年の東京オリンピックでは、陸上男子マラソンは関東地方の暑さに配慮して札幌市内で開催されましたが、こうした配慮にも関わらずレースのスタート時は気温26度・湿度80%、ゴール時は気温28度・湿度72%という過酷な状況に。結果、スタートラインに立った106選手のうち、30人が熱中症症状などで途中棄権することになりました。
https://climateknowledgeportal.worldbank.org/country/qatar/climate-data-historical
【参考】Report: women’s marathon – IAAF World Athletics Championships Doha 2019 | WORLD ATHLETICS(外部リンク)World Athletics (外部リンク)The World Championship marathon will be held at midnight | Running(外部リンク)「出場106人中30人棄権、倒れ込む選手も…夏マラソンの過酷さ示す」 | 読売新聞オンライン(外部リンク)服部勇馬は深部体温40度以上、執念の完走も重い熱中症…男子マラソンは湿度80%、30人棄権の過酷レースに | 東京新聞WEB(外部リンク)
気候変動の影響による雪不足も年々深刻化しています。近年では日本各地のスキー場で開催される予定だったレースや大会が雪不足によって開催中止になるケースが増えてきています。例えば北海道・札幌で例年開催されていたクロスカントリースキーレースは「積雪不足」が原因で2020年と2021年のレースが開催中止に。また、新潟県で予定されていた「クロスカントリー競技会2023-2024」も1月〜2月にかけて雪不足のための中止が相次ぐ事態に。このような雪不足が原因で大会が中止に追い込まれるケースは、北海道だけでなく東北や長野など雪国と呼ばれる各地や海外でも相次いでいます。
クロスカントリー2023-2024競技会予定と結果 | 公益財団法人新潟県スキー連盟(外部リンク)「札幌トヨタ杯クロスカントリースキーレース2020」 | S.A.J.競技データバンク(外部リンク)「札幌トヨタ杯クロスカントリースキーレース2021」 | S.A.J.競技データバンク(外部リンク)「東北で雪不足 祭りやスキー大会中止も 平年以上の降雪は2地点のみ」 | 朝日新聞DEGITAL(外部リンク)「暖冬で雪不足 スキー大会も急きょ会場変更して開催 福島」 | NHK 福島 NEWS WEB(外部リンク)「雪不足で中止 長野県スキー大会週間のジャンプと複合」 | 信濃毎日新聞デジタル(外部リンク)
日本では大雨の年間発生回数が増加しており、より強度の強い雨ほど増加率が大きくなっています。また地球温暖化の影響で台風も年々勢力を増しています。通常は荒天でも試合を開催するJリーグでも豪雨・雷雨などを理由に試合中止となる事例が報告されています。2020〜2023年で雷雨・豪雨によって試合が中止となった事例は9件。台風によって試合が中止となった事例は17件です。2017年以前と2018年以降の平均では試合中止数が約5倍に。これから将来、豪雨・雷雨がさらに激しくなり、台風が勢力を増すと、試合中止の事例がさらに増えることが懸念されます。
大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化 | 気象庁(外部リンク)勢力を増す台風 〜我々はどのようなリスクに直面しているのか〜 2023 | 環境省(外部リンク)
Jリーグ気候アクション
ここまで気候変動の影響でスポーツイベントが中止・延期になったり、アスリートに被害が及んだ事例を紹介してきました。しかし、被害を受ける一方で、スポーツ界は気候変動の加害者でもあります。日本財団が日本で行われた柔道の国際大会の試合会場で廃棄ごみの実地調査を行ったところ、サンプリングした約88kgのごみの内、可燃ごみの30.7%、不燃ごみの60.0%が使い捨てプラスチックごみという結果がでました。中でも使い捨てプラスチックごみ全体においては“容器”が最も多く全体の31.4%を占めており、次いで“包装”が全体の26.2%を占めていました。これは重量換算での割合になるので、プラスチックが軽量であることを踏まえると、ごみの総数ではさらに多くの割合になります。スポーツイベントでは「ペットボトル」「使い捨て食器」「グッズ販売に伴う包装」など、様々な使い捨てプラスチック製品を大量に使用しており、その過程ではCO2を多く発生させ気候変動を加速させてしまっているという現実があります。
このまま気候変動が進行すれば、スポーツを楽しむこと自体ができなくなってしまう可能性があります。それどころか外に出て生活することすら厳しくなってしまうかもしれません。気候変動を食い止めるための特効薬はありません。「HEROs PLEDGE」は1人ひとりができることから取り組むため、まずはスポーツ界からの使い捨てプラスチック削減を掲げています。未来の子どもたちがスポーツを楽しめる環境を守るためにも“今すぐ”に“できることから”はじめましょう!
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