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環境問題

アスリートたちが語る資源循環
~スポーツ界の挑戦~

 

待ったなしの地球温暖化、プラスチック汚染問題に対し、スポーツ界ができることはーー。

大阪・関西万博も終盤に差し掛かった20259月、EXPOメッセ「WASSE」で展開された環境省・経済産業省主催のテーマウィークの中で、HEROs PLEDGEのパートナーアスリートや団体が登壇。
「スポーツ界が挑むプラスチック資源循環」について、4つの見ごたえあるセッションが繰り広げられました。

1.「なぜスポーツ界が環境問題に取り組むのか?」

近年は気候変動が深刻さを増し、真夏の屋外スポーツの実施が困難になったり、冬季スポーツの大会が雪不足のために中止になるなど、顕著な影響が出始めています。

今後さらに気候変動が進むことで、将来的にはスポーツができなくなるような未来も予想される一方で、スポーツ会場では依然として大量の電力や使い捨てプラスチックが使用されるなど、「スポーツ自身が環境問題を加速させている」という面にも目を向けなければならない、という危機意識が共有されました。

「スポーツにはこんなに魅力があるのに、環境を壊すならスポーツなんてやらなければいい、と言われてしまいたくはない。スポーツを続けていくためにはどうしていけばいいのか?という部分で、環境問題に取り組む意義は非常に大きい」とバンクーバー五輪フィギュアスケート日本代表の小塚さんは語ります。

アトランタ五輪競泳日本代表で、一般社団法人SDGs in Sports代表理事として本プロジェクトを先導してきた井本さんは「難しそうな環境問題も、アスリートたちの声を通して知っていけば、すごく身近に感じられたりもする。
ぜひ私たちの活動を知っていただき、「スポーツが変われば社会も変わる」ということで、みんなで一緒に社会を変えていきたい」と力強く呼びかけました。

 

2.「スポーツイベントでのリユース食器導入の挑戦」

みなさんは、スポーツイベントのごみの中で一番多いのは何だと思いますか?

それは飲食販売のキッチンカーや売店から出る容器やペットボトル。
それを減らすのに一番効果的な方法は、プラスチックの容器を洗って繰り返し使えるリユース食器にすること。
万博でもトライアルが行われていました。
給食センターなどで高圧洗浄するため、衛生的にも問題ありません。
お祭りやイベントで使われ始めているこのリユース食器導入の取り組みを、スポーツイベントでこのを定着させるにはーー。

Jリーグクラブとして、20年以上リユース食器の使用に取り組んできたJ2ヴァンフォーレ甲府。
2004年から こうしたリユース食器を、ドリンクについては全試合で100%、フードについても一部導入することで、1試合あたりおよそ2500個、年間5万個近い使い捨てプラスチック容器の削減を実現してきました。

一番の課題は、使い捨てプラスチック容器よりも割高になりがちなコスト。
J2湘南ベルマーレでは、昨年のホームゲームでキッチンカー全店舗を対象に試験的導入を行いました。
ブランド&メディア部部長の風村ひかるさんは、今後本格的な導入を目指していく中で、来場者の人たちが「スポーツ会場という非日常の中で得た体験を日常の中に持ち帰り、行動を変えることで、変化が社会に波及していく」という効果への期待感を語りました。

 

3.「スポーツウェア・衣類の資源循環」

アスリートたちがひそかに心を痛めている問題。
それは、スポーツウェアを含む衣料ロスのこと。
3つのスポーツアパレル企業との関わりの中から、スポーツウェアの資源循環について考える3人のアスリートが一堂に会した本セッション。
おそらくは日本初の画期的な議論の場となりました。

プロサーファーで、パタゴニアのアンバサダーとして環境教育にも取り組んでいる武知実波さん、
競泳パラリンピアンで、アシックスのブランドアンバサダーとしても活躍する一ノ瀬メイさん、
さらにゴールドウィン社外取締役を務める井本直歩子さんは、
いずれも日本代表選手として活躍する中で、ひとりでは着用しきれないほどのウェア類を連盟などから支給され、最初はうれしかったものの、徐々に疑問を覚えるようになったと言います。

一ノ瀬さんはさらにドキュメンタリー映画『ザ・トゥルー・コスト~ファストファッション 真の代償』を観たことで、安い服の生産の裏側にどれほどの搾取が存在していたかを知り、
「自分はパラアスリートとして、みんなが生きやすい社会や世界平和を願って運動してきたにも関わらず、ファッションの裏でこのように苦しんでいる人たちのことを考えられていなかった」という反省から、
服がどのような環境でつくられているのかをしっかり考えるようになったそうです。

各登壇者それぞれから、「本当に好きな服だけを買う」「できるだけ長く大切に着る」「メルカリなどセカンドハンドで買う」など、「服を大切にする」ことについて本質的な気づきや心がけが紹介されたほか、
服を買う際にそのブランドのサステナビリティ度を手軽にチェックできるアプリ「Shift C(シフトシー)」、
スポーツ会場など様々な場所に置かれている衣類回収ボックス「PASSTO(パスト)」や
BRING(ブリング)」の利用など、すぐに取り入れたい習慣の数々も提案されました。

一方、武知さんからは「愛着をもって着られた服が、また次の人の手に渡り、新たな愛着が紡がれていく」という古着ならではの魅力や「ストーリーの価値」も提起されました。

パタゴニアの「Worn Wear(ウォーンウェア)」や
ゴールドウィンの「GREEN BATON(グリーンバトン)」など、
不要になった製品をリペアして販売する取り組みや、
これまでリサイクルが難しかったシューズの水平リサイクルに挑戦したアシックスの「Nimbus Mirai(ニンバスミライ)」など、
各ブランドの最前線の取り組みも紹介されるなど、情報満載のセッションでした。

 

4.「循環型のスポーツイベントを目指し、私たちにできること」

元プロ野球選手・斎藤佑樹さんは、2025年2月に「斎藤green」という会社を立ち上げ、
北海道に緑あふれる少年少女専用の野球場「はらっぱスタジアム」をつくるなど、
地球温暖化のことも考えつつ、木を植えて緑を増やす活動をはじめました。
「とにかく草をいっぱい生やしていきたい。地球上のアスファルトがすべて天然芝になったら、地球温暖化もきっと解決できるに違いないと思いながら活動しています」と思いを語ってくれました。

一方、小塚さんは2026アジア大会のアスリート委員を務めています。
2024年のパリ五輪・パラリンピックでは様々な環境配慮の取り組みが話題となりましたが、
小塚さんも昨年、HEROs PLEDGEのパートナーアスリートとして鈴鹿サーキットを視察し、
「ペットボトルゼロ」「プラスチック容器の使用もゼロ」「燃料もバイオ燃料への切り替えを進める」など、
海外にも引けを取らないトップクラスの取り組みに深い感銘を受けたそうです。
今後は自身もそうした循環型の大会の実現に向けてがんばっていきたいという決意を語りました。

著名なアスリートやスポーツクラブのスタッフたちが環境をテーマに多角的に語るという類を見ない時間となった今回、HEROs PLEDGEでの学びや取り組みが存分に生かされた登壇者たちの力強い言葉に、会場いっぱいの来場者からも盛んな拍手が送られていました。

 

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