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私たちの生活に欠かせない存在であるプラスチック。軽く・耐久性に優れ・加工も容易で安価なことから世界中で使用されています。プラスチックは日常生活を便利にしてくれるだけでなく、医療機器や自動車のエアバックシステム、災害時の救助用具等に欠かせない素材としても使われており、多くの人の命を守ることにも役立っています。 しかし一方で、プラスチックは生産から廃棄に至るまでのプロセス全体が複合的に影響し、気候変動をはじめ環境問題などの原因となるというデメリットもあります。 現在、地球では気候変動が極めて深刻な問題となっています。人の命を救う存在でもあり、気候変動に悪影響を及ぼす存在でもあるプラスチック。今こそプラスチックとの関わり方を見つめ直さなくては、地球と人類は取り返しのつかないダメージを受けることがわかっています。そのためにはまず、私たち1人ひとりが生活するなかでプラスチックの不要な使い捨てをしないことが大切です。
引用:(Our World in Data)
プラスチックが消費財として様々な用途で使われるようになったのは1950年代のこと。当時の生産量は世界全体で年間200万トン程度でした。しかし、現在では年間4億6,000トンものプラスチックが生産されています。(2019年)
プラスチックの生産量は指数関数的に増えていて、過去30年間で4倍も増加しました。かつてはおもに先進国で使われていたプラスチックも、近年は新興国や途上国でも広く使われるようになり、生産量の増加が加速しています。今後も需要は増え続けると考えられ、2060年には現在の3倍近くの12億くの12億3,100万トンにまで生産量が増えると予想されています。特に気になるのは、食品包装や飲料容器など使い捨てプラスチック製品の生産・消費が著しいこと。国連環境計画(UNEP)の報告によると、プラスチックの生産量のうち36%はペットボトルをはじめとした容器や包装などの一度使われただけで捨てられる「使い捨てプラスチック」が占めているということです。(2015年時点) プラスチックの容器や包装は、食べ物を清潔に、より長い期間貯蔵したり、重量を軽くすることで運搬を容易にしてくれる便利な製品です。しかし同時に環境破壊のリスクを抱えていることも忘れてはいけません。便利さと引き換えに、失っているものをしっかりと認識する必要があるのです。
【参考】「プラスチックを取り巻く国内外の状況<第3回資料集>」|環境省(外部リンク)「Plastics Management Indexで日本が2位、ドイツがトップに」(2021.10.5)|日本財団(外部リンク)「国境なき課題、プラスチック汚染」|国際農研(外部リンク)Reducing Plastic Production To Achieve Climate Goals:|CIEL(外部リンク)問題プラ「廃止」の声も◆条約どうなる?日本の立場は?【news深掘り】|時事ドットコム(外部リンク)
使い捨てプラスチックは私たちの生活に便利な反面、地球に様々な悪影響を及ぼしています。代表的な問題としては海洋ごみとそれに伴う海洋汚染、陸上汚染、生態系の破壊、 CO₂の排出などが挙げられます。これらの問題を解決するためにはリサイクルの促進はもとより、そもそもの使い捨てプラスチックの使用を無くしていくことが大切です。現在、政府・企業・各種団体などが様々な取り組みを行っていますが、さらに成果を上げるためには消費者の日常的な選択が重要です。製品を選ぶ際には「持続可能な材料で作られたものを優先する」「使い捨てではない再利用可能な製品を選ぶ」「無駄なプラスチック包装を避ける」など、個々の消費行動を見直すことも大切です。
海洋ごみの65パーセント以上をプラスチックごみが占めています。 出典:環境省「海洋ごみをめぐる最近の動向」(平成30年9月)
世界中の海洋生態系に甚大な影響を与える海洋ごみ。特に注目すべきは「海洋ごみの6割超がプラスチックごみ」という事実です。海に流れ込むプラスチックごみの量は、世界で年間1,400万トン(※)。これは、東京スカイツリー約222基分に相当する量になります。これらのプラスチックごみの多くは、使い捨ての食品容器、ペットボトル、包装材料など、日常生活で広く使用されているものから発生しています。このままプラスチックの製造から廃棄に至る社会のシステムを改めないと、2050年には海の中のプラごみの重さが魚の総重量を超えてしまうともいわれています。
※Newweek「Sea Plastics Are Causing Embryos to ‘Go Wrong’ and Die」
【参考】「 【増え続ける海洋ごみ】今さら聞けない海洋ごみ問題。私たちにできること」|日本財団ジャーナル(外部リンク)プラスチックを取り巻く国内外の状況<第3回資料集>|環境省(外部リンク)
プラスチック廃棄物が海や河川を通じて海洋に流出し、広範囲にわたる環境問題を引き起こす現象を海洋プラスチック汚染と言います。海洋プラスチックをクジラなどの哺乳類や魚、鳥といった海辺の生物が餌と間違って食べてしまい、命を落とす事例も後を絶ちません。2019年に英スコットランドの砂浜に打ち上げられた10歳のクジラの体内には、100キロものプラスチックごみが詰まっていました。プラスチックは有害な化学物質を吸着してしまう特徴を持っているため、間違って食べてしまった生き物の体内に有害物質が蓄積してしまうことがあります。プラスチックは有害な化学物質を吸着してしまう特徴を持っているため、間違って食べてしまった生き物の体内に有害物質が蓄積してしまうことがあります。 また、プラスチックは石油が原料ですが、使用目的に応じてさまざまな化学物質が添加されており、そうしたものの一部も生態系に影響を及ぼすことが心配されています。また、プラスチックが海に漂うことで、珊瑚礁や海草などの生育環境が悪くなります。このような環境の変化は、海の生態系全体のバランスを崩しかねない危険性があるのです。
【参考】「クジラの胃に100kgのごみ、なぜプラごみ食べる?」|ナショナル・ジオグラフィック(外部リンク)
5ミリ以下の極小サイズのプラスチックのことを「マイクロプラスチック」といいます。洋服を洗濯した際の化学繊維や歯磨き粉や洗顔料に含まれるスクラブなど、もともと小さなプラスチックのほか、海洋プラスチックが日差しや衝撃で劣化し、細かく、小さくなったものも含まれます。これらは非常に小さなプラスチック粒子のため、海中に広がりやすく、より深刻な環境汚染につながる物質です。
極小サイズゆえに小さなプランクトンから大型の魚類まで、さまざまな海洋生物が誤って摂取してしまいます。マイクロプラスチック自体が生物の体内でどのような影響を与えるのかは、まだ未知数です。しかし、マイクロプラスチックが有害物質を吸着していた場合、プラスチックとともに有害物質が生き物の体内で蓄積されると、健康リスクを引き起こします。
この問題は食物連鎖を通じてさらに拡大し、最終的には人間にも影響を与えることが懸念されています。すでに人間がマイクロプラスチックを摂取していることは報告されていて、2019年のオーストラリアでの研究では、人間が1週間に摂取するプラスチックの量はクレジットカード1枚分(約5グラム)にあたるという結果も報告されています。
【参考】Plastic planet: How tiny plastic particles are polluting our soil|UNEP(外部リンク)「【増え続ける海洋ごみ】マイクロプラスチックが人体に与える影響は?東京大学教授に問う」|日本財団(外部リンク)
南太平洋に位置する無人島「ヘンダーソン島」世界遺産にも登録されているにも関わらず、砂浜に推定3770万個の廃棄物が流れ着き、プラスチック汚染が深刻な場所となっています。
海に悪影響を与えるイメージが強いプラスチック汚染ですが、実は陸上もプラスチック汚染によって悪影響を受けています。研究者によると、陸上のマイクロプラスチック汚染は、海洋のマイクロプラスチック汚染よりもはるかに高く、環境に応じて4〜23倍高くなると推定されています。陸上に廃棄されたプラスチックが土壌に蓄積すると、土壌の微生物活動が抑制され、土壌の質そのものが変わってしまう可能性もあります。また、小動物や鳥類がプラスチック片を誤飲することで、生命を脅かされる可能性もあります。
【参考】 太平洋の無人島に「世界最悪」のプラスチックごみ集積 世界遺産|BBC NEWS JAPAN(外部リンク) Plastic planet: How tiny plastic particles are polluting our soil|UNEP(外部リンク)
世界で排出されるCO2は年間17億トン※といわれており、東京ドーム約1,400杯分に相当します。
化石燃料である石油を原料とするプラスチックは作る時にもごみとして焼却する時にも地球温暖化の原因となるCO₂を大量に排出します。現在、世界のCO₂排出量は年間約17億トン。そのうちの3.4%がプラスチックに起因するものだと言われています。
プラスチックの生産量は今後も増え続け、2050年には現在の3倍近くになると予想されています。そうなると、地球の平均気温の上昇を1.5度以内に抑えるために残されたCO₂の量(カーボンジャケット)の13%以上をプラスチックの製造や焼却のために使ってしまうことになります。プラスチックの利用が、気候変動の大きな要因になっているのです。
※出典:ナショナル ジオグラフィック(2021)「脱プラスチック データで見る課題と解決策 (ナショナル ジオグラフィック 別冊)」日経ナショナルジオグラフィック
【参考】「2040年までにプラスチックの生産を75%減らさなければならない理由」|グリーンピース (外部リンク) Reducing Plastic Production to Achieve Climate Goals: |CIEL(外部リンク)
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持続可能な資源利用の有効手段とされるリサイクルですが、実際にどれだけの効果を上げているのでしょうか。多くの先進国では、使い捨てプラスチックについて高いリサイクル率を達成しています。しかし、回収された使い捨てプラスチックが自国での処理能力を超えた場合、リサイクルされずにアジアをはじめとした世界中の国々に輸出されているという事実も指摘されています。例えばヨーロッパでは、毎年発生する 2,500 万トンのプラスチック廃棄物のうち、実際にリサイクルされるのは30%未満※1です。
日本もプラスチックのリサイクル率9割を誇っているものの、リサイクルされたうちの約6割は「サーマルリサイクル(焼却時の熱エネルギーを発電などに使う)」という、最終的には焼却される方法で再利用されています※2。つまり日本のプラスチックごみの大半は、焼却して大量のCO₂を発生させ、地球温暖化に拍車をかけているのです。
※1 China bans plastic waste imports: a blessing in disguise?|Wartsila.com(外部リンク) ※2 (一社)プラスチック循環利用協会「プラスチックリサイクルの基礎知識2023」焼却時の熱エネルギーを発電などに使うこと。日本ではサーマルリサイクルとも呼ばれるが、物質として再利用できない焼却熱の利用は、国際的には「リサイクル」として認められておらず、日本政府も熱回収あるいはサーマルリカバリーと呼んでいる。
私たちの身の回りにはペットボトルやスーパーのレジ袋、食品パッケージなど様々な使い捨てプラスチックで溢れています。使い捨てプラスチックは便利ですが、実際に使用する時間はせいぜい数分から数日ということが大半。にもかかわらず、一度自然界に漏れ出てしまうと、自然分解されるまでには数百年もの時を要します。
また、日本人のプラごみの廃棄量は世界第2位。私たちには当たり前の日常風景も、他国の人の目にはプラスチックまみれの風景に映るかも知れません。私たちが気候変動に対してすぐにできるアクションは、使い捨てプラスチックの使用を減らすこと。例えば、マイボトルを持ち歩く、買い物の際にはエコバックを使うなど、できることはたくさんあります。
【参考】【増え続ける海洋ごみ】今さら聞けない海洋ごみ問題。私たちにできること|日本財団ジャーナル(外部リンク)日本人のプラごみ廃棄量は世界2位。国内外で加速する「脱プラスチック」の動き|日本財団ジャーナル(外部リンク)
スポーツイベントは多くの観客が集まる一大イベントですが、それに伴い大量の使い捨てプラスチックを使用しています。2023年12月に開催された柔道グランドスラム東京大会にてサンプリング調査を行ったところ、会場で出たごみ75.2キロのうち、使い捨てプラスチックごみは約38%にあたる28.3キロでした 。(※)多いのはペットボトルやプラスチックカップといった飲料容器、食品提供の際の使い捨て食器類。また、会場で販売されるグッズの包装にもプラスチックが使われています。これらのプラスチック製品は使用後すぐに廃棄されることがほとんどで、環境に大きな負担をかけています。これからは環境への影響を考慮し、持続可能な素材への切り替えや、リサイクルの推進のみならず、観客や選手などの関係者自身が使い捨てプラスチックを使わない選択をするように行動を変えることが必要です。
「HEROs PLEDGE」は、私たちにとって身近なスポーツ界から使い捨てプラスチックの削減を推進します。スポーツ界から使い捨てプラごみゼロを目指しましょう。
※日本財団「2023年12月3日開催柔道グランドスラム東京大会(東京体育館)での実地調査結果」(2023年12月実施)
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